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生003 : ドイツに学ぶ動物福祉の思想 ①

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ティアハイムは100%民間の施設。待つのは死ではなく、新しい飼い主。
ティアハイムとは、ドイツ語で「動物の家」。殺処分をゼロにするために、日本もお手本にしたい施設として注目されています。sei003photo1そこで、まず基本として、ティアハイムとは何か。どんなことを行っている施設なのか。それを支えるドイツの動物福祉の精神とは。
2回にわたり、ドイツ・ベルリンに暮らし、獣医師という立場でドイツの動物保護を内部から学んだ京子・アルシャーさんに話しを聞きます。

まず、ティアハイムとは
ドイツ連邦共和国は、欧米諸国の中でも動物福祉が進んでいる国です。オーストリアやスイス、スウェーデンなども同様に先進的ですが、英語圏ではない国の情報はなかなか日本に入ってこないという現状があります。けれども近年、少しずつ現地在住の日本人の獣医師やドッグ・ジャーナリストの発信により、今まで知らなかった犬文化の様子が私たちの耳にも入るようになってきました。  その中でよく聞くようになった新しい言葉、「ティアハイム」。ドイツ語で「動物の家」を意味する、ドイツ特有の動物保護施設です。日本の動物愛護センターやいわゆる保健所とは異なり、行政の施設ではなく、100%民間の施設。運用資金は税金ではなく、すべて市民や企業からの寄付や会費、寄贈などのドネーションによって賄われています。スタッフは公務員ではなく、きちんと給料をもらって運営管理を行う人と、それを手伝うボランティア・スタッフです。

sei003photo2そして国内の施設数の多さにも驚かされます。 「ドイツには推定1000くらいのティアハイムがあると思います。ドイツの大きな街には数施設、人口2万人規模の小さな町にも1施設はあります」と、アルシャーさん。最近日本でもテレビで紹介されたベルリンのティアハイムは、世界最大の動物保護施設といわれています。通常のティアハイムは、主に犬猫の保護をしていますが、ベルリンのティアハイムには、サル、ウマ、ウシ、ミニブタ、鳥類、イグアナ、トカゲ、ヘビなどのハ虫類もいます。カメは、冷蔵庫の中で冬の間はちゃんと冬眠して、新しい飼い主が来るのを待っているそうです。

死を待機する収容所ではなく、次の里親を待つ「動物の孤児院」
ティアハイムの役割は大きく2つ。「動物の保護と収容」と「動物の仲介と譲渡」です。保護した動物に病気や問題行動があり、すぐに譲渡できない場合は、治療やトレーニングを行います。sei003photo3
現時点での日本にある施設との最大の違いは、殺処分を行わないことです。つまりガス室に入れられる日を待つ場所ではなく、孤児院のように次に愛情を注いでくれる人との出会いを待つ場所。日本の収容所のような、暗く、臭く、冷たい場所ではなく、今日を気持ちよく生き、明日も楽しく生きていくための希望の場所として存在しています。

ただ、厳密に言えば、たとえば交通事故で瀕死の状態で収容された犬や、引き取り時に後期のガンだったなどの場合は、苦しみから解放するために安楽死が選択されることはあります。また、過去のトラウマなどにより、時間をかけてあらゆるトレーニング等をしても、世話する人にどうしても心を開かず、散歩に出るのも社会に危険を及ぼすことが回避できない絶望的な非社会性や、「レージ・シンドローム(激怒症候群)」という先天性の脳の病気からくる攻撃性がある場合などは安楽死が検討されます。

sei003photo4 しかし、安楽死の判断は、獣医師と飼養士(3年間の実習と理論学習を受けた、国が選定する職業種)とティアハイム所長の3者の意見が合致したときのみ。日本で混同されがちな「殺処分」と「安楽死」はイコールではありません。「殺処分」は、治療すればこのまま生きていられる動物や、矯正トレーニングをすれば普通に生きていける動物、さらには健康な犬を、収容所がなく行き場がないといった人間の都合を理由に殺して「処分」することです。よって日本は現状、殺処分大国ですが、ドイツでは殺処分ゼロを実現していることになります。

ティアハイムの基本を紹介したところで、次回はもう少し詳しいシステムや背景をお伝えします。

(写真提供:京子・アルシャーさん)

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