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しゃベル ✕ ワンブランド わん!ダフルストーリー Vol.18
「ハル、ありがとう!」悪性リンパ腫で逝った愛犬が遺してくれたものとは?

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元気いっぱいの愛犬に起きた異変

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滝沢さん一家。左がハル

群馬県に住む滝沢憲一さん・美奈子さんご夫妻。2人の子どもたち、そして3頭の愛犬・リッキー(11歳、キャバリア)、ピート(5歳、ラブラドールレトリバー)、ニコラ(2歳、イングリッシュセッター)と一緒に、にぎやかに暮らしています。ご夫妻と愛犬3頭の共通の楽しみは、ディスクドッグ。飼い主が投げた円盤状のディスクを犬がキャッチするスポーツです。11歳のリッキーはもう引退していますが、5歳のピート、2歳のニコラは大会出場を目指して日々トレーニングに励んでいます。一家にディスクの楽しみを教えてくれたのは、今は亡き滝沢家の愛犬・ハル(アイリッシュセッター)でした。

「ハルはとにかくヤンチャで自由奔放なタイプの犬だったので、しつけも兼ねてトレーニングをしようと、ディスクを始めたのです。足が速いので上手くなるかも!と期待したのですが、興味惹かれるものがあるとディスクそっちのけで脱走してしまうので(笑)、なかなか上達しませんでした。でもハルと一緒にディスクの練習をするのは本当に楽しくて…。ハルには犬と一緒に外で思いっきり体を動かす楽しさを教えてもらいました」と美奈子さん。ディスクを楽しむ美奈子さんの楽しそうな様子に感化されて、ご主人もピートを家族に迎え、ディスクに取り組むようになりました。

ところが、そんなある日、元気いっぱいだったハルに変化が。喉の近くに不自然な腫れがみつかったのです。

「最初は筋肉がついたのかな?と軽く考えていました。人一倍元気なハルが病気だなんて想像もしなかったのです」という美奈子さん。しばらくすると、しこりは大きくなり、ついには他の飼い主さんにも「どうしたの?一度、獣医さんに診せたほうがいいよ」と言われるほどに。そして連れて行った動物病院で告げられた病名は、思いもよらないものでした。

「悪性リンパ腫」。ハルは血液のがんを患っていたのです。

治療すべきか否か。家族が下した決断は

在りし日のハル。マホガニーレッドの毛並みが美しい

在りし日のハル。マホガニーレッドの毛並みが美しい

獣医師から滝沢さんが受けた説明は、概ね次のような内容でした。

・ハルのがんはかなり進行していること

・治療方法としては抗がん剤治療があるが、完治する見込みは少ないこと

・月7万円近い治療費がかかること

事実上の余命宣告に、ショックを受けた滝沢さん一家。わずかな望みにかけてつらい抗がん剤治療をするべきか。それとも運命を受け入れて最期までのびのびと自宅で過ごさせてあげるべきか…。話し合いの末に一家が出した結論は後者、つまり抗がん剤治療はせず、自宅でハルを看取ることでした。

美奈子さんは当時の気持ちを「ほんの少しの延命のために抗がん剤で苦しい思いをさせるよりも、天がハルに授けた運命に逆らわず、天寿を全うさせてあげることを選びました。病院ではなくハルを慣れ親しんだ自宅で看取ってやりたいという気持ちも強かったですね」と振り返ります。

ハルは美奈子さんたちの心の葛藤を知ってか知らずか、がんが判明してからもしばらくの間は元気そのもの。ディスクで遊んだりお散歩に出かけたりすることもできていました。美奈子さんは「この子が本当に病気だなんて信じられない…」、そう思う瞬間が何度もあったと言います。食欲も旺盛。がんが見つかるまでは健康を考えてフード中心の食生活でしたが「残りの日々、せめて好きなものを食べさせてあげよう」と、好物の鶏のから揚げを与えると、大喜びで食べていたそうです。

しかし、がんはハルの体内で確実に進行を続けていました。

自宅療養を始めて数か月後、夏の初め頃になると、ハルは次第に食欲をなくしていきます。心配した美奈子さんは、好物のから揚げを始め、あの手この手で食べさせようとしますが、ハルはほとんど食べることができず、日に日にやせ細っていきました。

「あのころは、仕事から家に帰って玄関のドアを開けるのが本当に恐ろしかったです。留守の間にハルに異変が起きていたらどうしよう…、家族が誰もいないときにハルが旅出ってしまったらどうしようという不安でいっぱいでした」。

 

「ありがとう、ハル!」

そしてついにある朝、ハルは水も受け付けなくなりました。

「水が飲めなくなったハルをみて、今日がその日なんだと覚悟を決めました」という美奈子さん。ちょうど仕事が休みだったこともあって、小学生の次女と2人、その日はずっとハルと一緒に過ごしました。

「ハルの頭を膝に乗せて座り、体をなでながら『あのときは、ああだったね』『あの日は楽しかったね』と思い出話をしたんです。聞えていたのかどうかわかりませんが、ハルは安心した表情でしたね。そして私の膝に頭を載せたまま、ハルは息を引き取り、天国へと旅立っていったのです」。

イングリッシュセッターのニコラ

イングリッシュセッターのニコラ

ディスクを楽しむ憲一さんとピート

ディスクを楽しむ憲一さんとピート

ハルが亡くなって3年。滝沢家では2年前に新たにイングリッシュセッターのニコラを迎え、長老のリッキーを筆頭に計3頭の犬たちと暮らしています。ご主人の憲一さんはピートと、そして美奈子さんはニコラとディスクの練習に励む毎日です。ニコラは猟犬の血筋を引いたイングリッシュセッターで、ディスクの素質があり、最近みるみる成長してきているのだとか。

「ディスクというスポーツと出会ったおかげで、練習や大会出場のために外出する機会が増え、友人もたくさんできました。ディスクを始める前に比べて、人生がより豊かで充実したものになって、毎日が楽しいです。これも最初にディスクの楽しさを教えてくれたハルのおかげだと思っています」と美奈子さん。「ハルは今でも私たちの大切な家族。リビングに飾っているハルの写真を見るたびに、自然に笑みがこぼれます。いつも心の中で『ハル、ありがとう』って話しかけているんですよ」。

美奈子さんの今の目標は、ニコラと一緒にディスクの全国大会に出場すること。「ニコラの能力をもっともっと伸ばしてあげたいんです。天国のハルに良い報告ができるように、楽しみながら練習をがんばりたいですね!」

 

■しゃベル ニッポン放送

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