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5.92014
飼い主と動物の頼れる存在
今、注目の動物看護師の仕事を探る
ただの動物好きになってはいけない
動物と飼い主さんのために、幅広い仕事に携わっている動物看護師。仕事全般を通して、動物に接するのと同じくらい飼い主さんに向き合う時間が多いといいます。
「獣医師が目の前にいる動物の命を助けるための治療に集中できるよう、私たち動物看護師は飼い主さんの様子を注意深く見守ることを心がけています。もし、飼い主さんが何か聞きたそうにしているのに聞けないといった様子がみられたときや、獣医師が専門的な言葉を使って難しい説明をしているときは、私たち動物看護師が、飼い主さんと獣医師の間に入って、随時フォローをするようにしています」
「私が動物看護師になるためにヤマザキ学園へ通っていたとき、先生に言われたことで印象に残っている言葉があります。それは、〝ただの動物好きになってはいけない〟という言葉です。動物が好きで、動物看護師を目指している人の中には、腑に落ちないと思う方もいるかもしれませんが、動物医療は、動物にだけ向き合っているだけではなく、飼い主さんにもしっかり向き合わないと、動物と飼い主さん両者が満足のいく医療や看護を提供することができないということなのです」
自分が飼い主さんだったらと考えて行動
飼い主さんが安心して大切なペットを預けられる環境を整え、提供することが、ひいては大好きな動物たちの健康と幸せな生活を守ることにつながるのだといいます。
「ですから、私は動物看護師として行動する際には、〝自分が飼い主さんの立場だったら、病院にどうして欲しいか、また動物の気持ちを考えたらどうするべきか〟と考えるようにしています」
動物看護師には、動物だけではなく飼い主さんにも寄り添う気持ちが何よりも大切だという長田さん。通院していたペットが亡くなった際、飼い主さんから感謝の手紙や貴重なペットの写真を頂くこともあるそうです。そして、また新たにペットを家族に迎えた際に、再び病院に来てくれるのが何より嬉しいことだそうです。
飼い主さんから頂いた、手紙や写真は大切な宝物です。 |
長く続けたい仕事
そんな長田さんが、現在、臨床以外で力を入れて取り組んでいるのが、女性でも長く働ける環境整備だといいます。
「動物看護師には女性が多く、長く勤務をしていると結婚・出産・子育てという女性ならではのライフイベントのために第一線を退くスタッフがいます。臨床現場で培った技術と知識を持つ優秀なスタッフが、再び病院に戻ってきて、貴重な戦力として、動物たちと飼い主さんのために働くことができるよう、職場の環境を整えることが、現在の目標です」
自ら動物医療の第一線で活躍しながら、後輩たちのマネジメントにも精力的に取り組む長田さん。今後、長田さんのもとでどのような動物看護師たちが羽ばたいていくのか楽しみです。
今回の取材を通して分かったのは、動物看護師という職業は、獣医師の診療サポートの他に、飼い主さんに対するケアやアドバイスなど、きめ細かな心配りやコミュニケーション能力が必要とされ、獣医師にとってはもちろん、飼い主や動物たちにもとても身近で頼れる存在であるということです。
これからの動物医療にますます欠かせない存在になる動物看護師。
今後、長田さんのようなホスピタリティ精神を持った頼れる動物看護師がたくさん活躍してくれるのが楽しみです。
動物看護師の一日
皆さんは動物看護師のことを知っていますか? 動物看護師は、私たちが普段姿を見かける診察室や待合室以外でも、動物や飼い主さんのためにさまざまな仕事をしています
入院患者や宿泊動物のケア 院内の衛生管理を担当し、給餌やバイタルサインのチェック、投薬、点眼などのケアも動物看護師がします。 |
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外来診療 受付業務、診察室での獣医師のサポート、調剤、飼い主さんに対する治療方針の説明のフォローなど。 受付での飼い主さんとの何気ない会話がペットの不調の原因を発見するヒントになることもよくあり、とても大切な時間です。 |
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昼休み、外来時間に出来なかった処置や検査など 時間のかかる処置や、各種検査、手術は主にこの時間帯に行います。 診察をスムーズに進めるために、動物を正しい位置で保定します。小児用の可愛いデザインの眼圧測定器を採用するなど診察時の和やかな空気づくりのための工夫も。 |
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外来診療 動物病院では院内で薬をお渡しするため、動物看護師が調剤します。わかりやすく説明することを心掛け、飲ませ方のアドバイスをすることも。 |
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翌日の準備 定期的に専門医の先生を招いて、介護やリハビリに役立つ動物行動学の勉強会も行っています。 情報共有のためにスタッフと1日の報告を行い、翌日の手術の準備の他に使用した器具の滅菌や医療材料、薬剤の点検・補充を行います。 |
動物看護師は現代の動物医療現場で、なくてはならない存在
成城こばやし動物病院
小林 元郎 院長
動物病院の仕事は動物の医療だけでは完結しません。当院に関していうと、獣医師が医療技術を以って解決できることは全体の5割程度。残りの半分は周りのスタッフにより支えられているのですが、その中でもホスピタリティや飼い主さんのメンタルケアなど、動物看護師の役割は大切です。私が動物看護師に求めることは、何よりもまず人として心地よい人であること。動物看護師としての知識や能力は勿論ですが、一番大事なのはその人の人間性です。所作や教養、気配りや心配りができる人間性が、飼い主さんの信頼へと繋がるのです。動物看護師という職業は長く続ければ続けるほどオーラが出て、居るだけで飼い主さんや周りが安心し、頼れる存在になれ、長く働くほどやりがいの生まれる仕事です。人と動物との架け橋となる動物看護師たちがますます活躍してくれることを願っています。
「認定動物看護師」とは
全国で約2万人が従事しているといわれている「動物看護師」という職業。現在、日本の動物看護師の資格は、さまざまな学校や団体が独自にカリキュラムや基準を制定し、認定していますが、国家資格や公的資格ではありません。近年、動物医療に対するニーズが高まるにしたがい、動物の命と健康を預かる動物看護師の知識・技術の高位平準化が求められるようになったことから、2009年に関係団体が集まり、一般社団法人日本動物看護職協会を設立。2011年には、全国統一試験の実施と資格認定を行う「動物看護師統一認定機構」が立ち上げられ、動物看護師の公的資格化へ向けての動きが強まっています。
「認定動物看護師」受験資格
【2014年度までの「移行期間中」の受験資格】
①動物看護関連専門校・専門学校・専修学校・短期大学・大学の既卒者もしくは卒業見込み者。②動物看護師として3年以上の勤務経験のある者。③上記資格に相当すると機構が認めた者。
NPO法人日本動物衛生看護師協会(JAHTA)認定
動物看護師の仕事に役立つ「6つの資格」
動物医療における看護職の資格であるAHT(アニマル・ヘルス・テクニシャン)やVT(ベテリナリー・テクニシャン)に加え、動物看護師のキャリアに付加価値の付く関連資格としてペットの健康管理も含めたグルーミングを行うDGS(ドッグ・グルーミング・スペシャリスト)CGS(キャット・グルーミング・スペシャリスト)や、飼い主へしつけの仕方を教えるCDT(コンパニオン・ドッグ・トレーナー)、注目のリハビリテーションを行うCRT(ケーナイン・リハビリテーション・セラピスト・ベーシック)があります。
詳しくは協会HP http://jahta.or.jp/index.html
動物看護師の知識を活かし、動物病院以外の職場で活躍する人たちがいることを知っていましたか?
動物看護師の職域は実はとても広いのです。
ヤマザキ動物看護短期大学を卒業し、ペット保険会社に勤務する入社5年目の飯島恵さんと、この春入社したヤマザキ学園大学 第一期生の鎌田瑞生さんにお話を伺いました。
アニコム損害保険株式会社勤務
ヤマザキ動物看護短期大学
動物看護学科 専攻科
2010年3月卒
鎌田 瑞生さん(右)
アニコム損害保険株式会社勤務
ヤマザキ学園大学(第一期生)
動物看護学部 動物看護学科
2014年3月卒
動物病院ではなく、
動物系企業
を選んだ理由
飯島さん 動物病院に勤務すると、動物病院にやってくる動物と飼い主さんを手助けすることが出来、深く密に関わることが出来ます。しかし、私は病院にやってくる動物と飼い主さんだけではなく、もっと多くの動物の健康の役に立ちたいという想いがありました。そこで、飼い主さんたちがためらうことなく、希望する医療を大切な動物たちに受けさせるための力になれる保険会社を選びました。
鎌田さん 大学で学んだ動物看護学を、動物看護という仕事で完結したくなかったんです。自分ならではの強みをプラスすることで、動物と飼い主さんのために力を発揮していきたいと考えて保険会社を選びました。今年入社したばかりですので、まずは動物看護学に保険という「金融」の知識をプラスした「動物看護学+金融」を極めたいと思っています。
やりがい、これからの目標
飯島さん 今の部署では、ご契約者さまと直接やりとりする機会が多いのですが、私は動物看護師として、病名や症例を知識として覚えているだけでなく、実際に動物がどういう状態にあるのか、今後進行するとどういったことが待っているのかなどがわかりますので、自然と飼い主さんに寄り添い、心をこめた言葉をお掛けするようにしています。私は今年で入社して5年目を迎えましたが、今後も、一頭でも多くの動物たちが幸せな生涯を過ごすためのお手伝いをしていきたいと思っています。
鎌田さん 私には、これからお客様に関わっていくうえでモットーにしている言葉があります。それは「ありがとうの連鎖は世界を変える」という言葉です。自分の携わる仕事が、お客様の「ありがとう」という言葉へとつながるよう、相手の立場や気持ちに寄り添うことを忘れずに、ひとつひとつの仕事に、誠実に向き合っていきたいと思っています。
上司からみた動物看護師としての飯島さん
アニコム損害保険株式会社
業務管理部 事務サービス課長 荒木拓也さん
動物が大好きであることはもちろん、例えば犬では犬種の特性や、犬種によってかかりやすい病気やけがについての知識が豊富なので、私をはじめ、同僚たちやお客様にとても頼りにされています。また、同僚やお客様の気持ちに自然と寄り添い、親身になって行動出来る点は、動物看護師としての飯島さんがもつ一面なのではないかと思います。