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2.182017
しゃベル ✕ ワンブランド わん!ダフルストーリー Vol.51
熊本から東京、そしてアメリカへ…。「ミスカラー」と呼ばれた愛犬ラティと私の11年
■出会いは1本の電話から
今から約11年前。当時、熊本県内の動物専門学校でトリマーになるための勉強に励んでいた中嶋香央利(かおり)さんは、あるブリーダーからトイプードルを購入する話を進めていました。
トイプードルはトリマーを目指す学生が好んで飼う犬種の1つ。「トイプードルのトリミングが上手に出来たらトリマーとして一人前」と言われることから、練習目的で敢えてトイプードルを飼う学生が多いそうです。中嶋さんも、ブリーダーから連絡を受け次第すぐに子犬を引き取って、一緒に暮らすことをとても楽しみにしていました。
ところが、待ちに待ったブリーダーからの連絡は意外なものでした。ブリーダーは「トイプードルの子犬が産まれたんだけど、この子は『ミスカラー』で売り物にはならない」と言うのです。
「ミスカラー」とは、黒や茶などの定番色の毛に、違う色が混ざってしまうこと。定番色の毛の犬が好まれる日本では売れにくいことから、業界では「ミスカラー」と呼ばれ、当時は商品価値が低い存在として扱われていました。
「ほんの少し違う色の毛が混ざっているから「ミス」(間違い)呼ばわりされるなんて、ひどいですよね。憤りを感じた私はすぐに『その子でなんの問題もありません。私が引き取ります!』と返答。そして、我が家にやってきたのが、今も一緒に暮らしているラティ(メス、11歳)なのです」と振り返る中嶋さん。
「日本ではミスカラーの犬は商品価値が低いので市場にほとんど出回りませんし、ミスカラーの子犬が産まれることを敬遠して繁殖犬として使われることもありません。あのままブリーダーの手元に残っていたらラティはいったいどうなっていたんだろう…?と今も考えてしまうことがあります。その答えは永遠にわかりませんが、私にできることは、私の手元にラティが来てよかったと思ってくれるように、ラティとの時間を大切に過ごすことだと思っています」。
■ラティは「ミスカラー」ではなく「パーティーカラー」の犬だった!
こうして熊本で始まった中嶋さんとラティの生活には、その後、大きな変化が訪れました。最初の変化は熊本から東京への引っ越し。中嶋さんがトリマーの勉強や就職のために上京、ラティも一緒に連れていくことになったのです。「住み慣れた自然豊かな熊本から、東京への移住。ラティにとっては人間の私の何倍も大きな負担があったと思います。でもラティは持ち前の明るい性格で、けなげに乗り切ってくれました。当時は仕事が忙しくてあまり構ってあげられなかったのに、体調も壊さず、お利口に家でお留守番をしてくれていたラティ。仕事でつらいことがあったときなど、ラティにどんなに慰められ、元気づけられたかわかりません」。
そして次なる変化は、なんとアメリカ・LAへの移住でした。中学生のころから、NYにある滞在型療養施設「グリーン・チムニーズ」でボランティアとして働くことを夢見ていた中嶋さんが、夢の実現に向けて動き始めたのです。
「いきなりNYで働く自信はなかったので、最初の1年間はLAの一般家庭にホームステイして語学学校に通いました。ホームステイなのでラティを一緒に連れていくことができず、最初の1年間は熊本の実家にラティを預けて単身アメリカへ。1年後、家を借りてラティと暮らせる体制を整えてから、日本にラティを迎えに行ったのです」。
1年ぶりに大好きな中嶋さんに会えて大喜びのラティでしたが、初めての外国での生活に、最初はおっかなびっくり。「特に英語に戸惑ったみたいです。私や周囲のアメリカ人が話す英語が理解できず、びっくりしたような顔をしていました。でも、積極的に外に連れ出すことで、次第にラティは英語にもアメリカ人にも慣れ、すっかりみんなの人気者になりました。日本で『ミスカラー』と呼ばれた毛の色も、アメリカの人たちには『素敵なパーティーカラーね!』って褒めてもらうことがよくありました」。
さすが多様性の国・アメリカ。人と違う点が、かえってチャームポイントとして認められることに中嶋さんも感激したそうです。
「それに、アメリカではカフェやショッピングセンターもほぼすべて犬同伴OKなので、外出はほとんどラティと一緒。おかげで『可愛い犬ね』って声をかけてもらうことも多くて、ラティのおかげで顔なじみになれた方もたくさんいます」。
■動物と共に生きることが「当たり前」の社会に
その後、LAからNYに移り、念願のグリーン・チムニーズでのボランティアを経験した中嶋さん。「グリーン・チムニーズは、情緒障害や学習障害のある子どもたちのための長期滞在施設。子どもたちは馬や犬などさまざまな動物との触れ合いを通じて、目覚ましい変化を遂げます。子どもたちの笑顔を見ているうちに、私も動物たちと一緒に社会をよりよくするための仕事に就きたいと考えるようになりました」。
そこで中嶋さんは、同じくNYに本部のあるドッグブランド「FOUND MY ANIMAL」に就職。現在は東京に拠点を移し、アジア地区統括を務めています。FOUND MY ANIMALの主要商品は、船で使われる頑丈なロープをモチーフにしたユニークかつスタイリッシュなデザインのドッグアイテム(リードやカラー)。2007年に誕生したばかりの新しいブランドですが、収益の一部がドッグレスキューやシェルターの運営費のために寄付されるとあって、愛犬家の間では大人気のブランドに成長しています。ブランド名の「FOUND MY ANIMAL」(私の動物をみつけた)には、不幸な犬達が一日も早く新しい家族と出会い、「FOUND MY HUMAN」(私の飼い主をみつけた)と感じてほしいという意味も込められているそうです。
「私のミッションはこの商品を、日本をはじめとしたアジア地域に紹介し、収益を動物愛護活動に役立てる仕組みを確立すること。活動はまだ始まったばかりで、課題はたくさんあります。そもそも、日本ではまだ寄附文化が根付いていませんし、動物愛護は『特別な人たちがやっていることでしょ?』という感覚を持っている人も少なくありません。もっとスタイリッシュにもっと簡単に動物愛護のためのアクションができる国になるよう、できることを1つずつ頑張っていきます!」という中嶋さん。もちろん、愛犬ラティも中嶋さんとともに日本に帰国。ほぼ毎日、都内にあるオフィスに一緒に出勤しています。
「この11年間、自分でも驚くほど大きく人生が変わりました。不安や淋しさでへこたれそうなこともありましたが、ラティが一緒だったから、乗り越えることができました。ラティはまさに私の人生の相棒です。これからも、ラティと一緒にできる限りいろいろな経験をして、豊かな時間を過ごしていきたいですね」。
〇 FOUND MY ANIMAL http://www.foundmyanimal.com/