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5.222016
しゃベル ✕ ワンブランド わん!ダフルストーリー Vol.11
犬は飼い主を映す鏡。愛犬が救った夫婦の危機
出張ドッグトレーニングを展開する「Dog Index」の代表を務め、自身も人気トレーナーとして活躍するMIKIさん。カナダ留学で学んだ「おやつを使わないトレーニング法」が評判を呼び、これまで多数の家庭犬とその飼い主さんを指導、それぞれが抱えるトラブルを解決に導いてきました。
MIKIさん曰く「ペットは飼い主を映す鏡。トレーニングをする過程で、飼い主さんの抱える問題が浮き彫りになってくることもあるんですよ」。
今回はMIKIさんと出会い、夫婦の危機を乗り越えたご夫妻と愛犬の物語をご紹介します。
■愛犬の行動には全て理由がある
「外ではいい子にしているのに、家に帰ると吠えてばかり。ウロウロ動き回ってばかりで落ち着きもなくて…。なんとかできないでしょうか?」
と、MIKIさんにカウンセリングを申し込んできたのは、都内に住む女性の飼い主・Tさん。MIKIさんは早速、カウンセリングの日時を設定、Tさんの自宅を訪問し、Tさん夫妻が少し前に飼い始めたという愛犬・ココアちゃん(仮名)に関する悩みを聞きました。
本来、飼い主にとっても犬にとっても自宅は最も落ち着く場所であるはず。なのにそこで落ち着くことができないココアには、何か問題があるのではないか…?というのがTさんの悩み。MIKIさんには、ココアに家の中で落ち着かせる方法をトレーニングしてほしいというリクエストがありました。
しかしMIKIさんが着眼したのは、ココアではなくむしろTさんご夫婦の言動。
「カウンセリングを初めてすぐに、ココアの問題行動の原因が、Tさんご夫妻の抱える問題にあることがわかりました。飼い主さんの精神状態や生活習慣が愛犬に悪影響を及ぼしてしまうことは、決して珍しいことではありません。よく、愛犬の問題行動を愛犬の性格や遺伝のせいにして諦めてしまう方がいますが、それはあまりにも乱暴な判断。愛犬の行動には全て理由があるのです」。
■トレーニングで浮き彫りになる飼い主自身の問題
とはいえ、まずはTさんの訴えを確認すべく、MIKIさんも付き添ってTさんご夫妻とココアの散歩に出発。家の外でのココアちゃんの様子を確認してみることにしました。
するとTさんのいう通り、ココアは家の外に出た途端、イキイキと楽しそうな表情に。まるでストレスから解放されたかのようです。そして家に帰ると急に落ち着かない様子を見せるようになりました。
ところが、家の中と外で違うのは、ココアだけではありませんでした。Tさんご夫妻の会話のトーンや表情も変わるのです。外では人の目もあるので、低い声で穏やかに話しているご夫妻ですが、家に帰ると声も大きくなって夫婦で言い争いになる場面もチラホラ。表情も外にいるときに比べてかなりこわばっていました。
「そう、Tさんご夫妻は多忙な生活ですれ違いが増えていた上に、ココアの育て方についての意見の違いもあって、当時、夫婦仲がかなり悪くなっていたのです。ココアは仲の悪いご夫妻の様子を感じ取って緊張し、吠えたりウロウロしたりと、落ち着かない行動をとるようになっていたんですね」。
ここまで事情を察することができたMIKIさんでしたが、それを直接Tさん夫妻に伝えることは控え、ココアとタッグを組んで「Tさん夫妻仲直り作戦」に打って出ることにしました。
■愛犬の瞳に映る、自分の姿を考えてみよう
「作戦」といっても、特別なことをしたわけではありません。定期的にMIKIさんがTさんのご自宅に出向いてご夫妻と一緒にココアのトレーニングをしながら、ココアについて、たくさん話をするようにしたのです。
「ココアのいいところって、どこだと思いますか?」
「じゃあ、逆に悪いところは?」
「将来、ココアとどんなことをしてみたい?」
「ココアのこと、どんな風に思っていますか?」
ココアをキーワードに、いろいろなことを話しているうちに、Tさん夫妻には次第に笑顔が戻ってきました。
「いろいろなことを話しているうちに、ココアを飼いたいと思ったときの気持ちが、ご夫妻に蘇ってきたんですよね。ココアを大切にしたいという気持ち、そしてココアを含め家族みんなで仲良く楽しい生活を送りたいと願った気持ちをおふたりは徐々に取り戻してくれました。ココアの前で言い合いをしたり、いがみ合ったりする回数も激減。するとココアの落ち着きのない行動もウソのように解消されました」。
そんなココアの様子を目の当たりにしたT夫妻はようやく、自分たちの不仲がココアに悪影響を与えていたことを自覚。「ココアのために、できるだけ喧嘩をしないようにしようね」と話し合い、結果として夫婦の危機を脱することができたのだそうです。
「私からは、仮に喧嘩をすることがあってもココアの前ではダメですよ、とアドバイスしました」とMIKIさん。ココアとT夫妻のようなケースは決して珍しくなく、知らず知らずのうちに飼い主が愛犬に悪い影響を与えているケースは多いそうです。
「愛犬に問題行動がみられるようになってきたら、まずは自分自身を振り返ってみてください。愛犬の瞳に映る自分の姿はどんなだろう…?と想像してみるといいですよ。もしかしたら、そこに問題行動を解消する鍵があるかもしれません」。
逆に愛犬の存在が飼い主やその家族が抱える問題(家庭不和や子供の引きこもりなど)を解消に導いたケースも多数目にしてきたというMIKIさん。
「正直でウソをつかない犬はまさに飼い主を映す鏡。飼い主と犬との関係が良好でないと、その鏡は曇り、傷ついてしまいます。1人でも多くの飼い主さんと愛犬が信頼関係を保ち、豊かで楽しい毎日を送ることができるよう、これからもドッグトレーナーとしてサポートを続けていきたいと思います」。