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10.262016
しゃベル ✕ ワンブランド わん!ダフルストーリー Vol.37
「まるで神業!」テレビでも紹介された、運動能力抜群のウィペットが教えてくれたドッグスポーツの楽しみとは?
■おっとりした愛犬の隠れた能力
今、家庭犬として私たちと暮らす犬種の多くは、もともと放牧や狩猟、防犯などで人間の暮らしを助ける役割を担う「使役犬」でした。そして、それぞれの役割に応じて交配・品種改良が進められ、それぞれ身体的な特徴や能力が発達してきたのです。
埼玉県に住む野澤勲さんの2頭の愛犬・ウィペットも、もともと17世紀ごろからイギリスで狩猟に使われてきた犬種です。主に「サイトハント」(視覚猟)用の犬だったというだけあって抜群に足が速く、今でもドッグレースやドッグスポーツで活躍する犬も多いといいます。
ただし、野澤さんがウィペットを飼い始めたのは、ドッグスポーツをさせようと思ったからではありません。先住犬であった日本テリア2頭のうち1頭が亡くなり、残った1頭が元気をなくしてしまったのを心配し、「遊び相手になってくれる犬を迎えようか」と考えていたときに、偶然出会ったのが、ウィペットのカラー(雌、現在7歳)だったのです。野澤さん自身はウィペットのことを良く知りませんでしたが、大の動物好きの奥さんたっての願いで、カラーを家に迎えることにしたそうです。
幼少のころのカラーは穏やかな性格で、先住犬との相性も良く、すぐに野澤家の生活になじみました。そして、しばらくすると野澤さんはカラーの思わぬ能力に気づくことになりました。
それは出掛けた先で偶然やっていた犬のイベントで犬の50m競走を知り、試しにカラーを走らせてみたところ、カラーの表情が豹変、予想を超える速さで50mを軽く走り切ったのです。「カラーは普段とてもおっとりしている分、その豹変ぶりに驚きました。数百年の間、狩猟犬として活躍してきた先祖の血がカラーにも脈々と流れているんだ、ということがよくわかりました」という野澤さん。「そのころ新たに飼い始めていた同じウィペットのビオラ(雌、現在7歳)とともに、カラーとビオラの持つ力を存分に伸ばしてあげようと思い、ドッグスポーツに取り組んでみることにしたのです」。
■奇跡の犬・ビオラ!
そしてカラーとビオラの2頭のウィペットとともに様々なイベントや大会に参加するようになった野澤さん。するとすぐにビオラが頭角を現し始めました。
「ビオラの足の速さは天性のもの。練習らしいことはしていないのに、50メートルを最速3秒8で走ったこともあります。走っているときは、獲物を追う狩猟犬そのものの表情。シャクトリムシのように体を伸縮させ、弓矢のように疾風の如く走ります」とのこと。
カラーとビオラは1歳になると、犬に疑似餌を追跡させてタイムを競う「ルアーコーシング」という競技に参加。その1年後にビオラは、全国大会で2位入賞という快挙を成し遂げました。
「どんどん実力をつけて良い成績を残すビオラがとても誇らしかった」という野澤さんですが、犬の体格や性別を無視して、単にタイムだけで優劣をつける競技の在り方や、その中毒性とスポーツとしての物足りなさで徐々に違和感を覚え、狭い世界から視野を広げて別の競技でもカラーとビオラを活躍させてみたいと思うようになったといいます。
「そんなときに出会ったのがレトリーブとディスクで、人が投げたアイテムをキャッチして持って来る競技です。これなら飼い主である僕も一緒にビオラたちと体を動かしながら楽しむことができると思い、本格的に取り組むことにしました」。
レトリーブに出場する犬種は様々ですが、当時は大会で他のウィペットに会えることがなかったそうです。でも、運動神経抜群のビオラはレトリーブでも思い存分その能力を発揮、ほとんど練習もせずに臨んだ初めての大会で、いきなり銀メダルを獲得したのを皮切りに、その後出場した全ての大会で優勝を飾ったのです。
「ビオラは本当にすごくて、ほとんど練習しなくても、すごい成果を出せるんですよね。むしろ飼い主の僕の方がついて行くのに必死で、練習に励んでいましたね(笑)」。
■テレビ番組でも絶賛された「ビオラの神業」!
一方、カラーはビオラと違って超マイペース。野澤さん曰く「カラーは気まぐれなんです。気持ちが乗らないとディスクを取りに行かなかったり、本部席に挨拶にいってしまったりすることもよくありました(笑)。でも、それでいいんです。僕らの主な目的は単に勝つことでなく、コミュニケーションを取りながら外で楽しく体を一緒に動かすことだと思っていますから」。
そんなある日、野澤さんとビオラにテレビ出演の依頼が飛び込んできました。知人の紹介で、ある番組のディスクキャッチの距離を競う企画に出場することになったのです。
「他の出場者は全国から集まった強豪ばかり。しかも僕は、まだディスクをはじめたばかりで上手く投げられなかったのですが…、ビオラはやってくれました。なんと60m越えの記録を出して、優勝したのです」。
そして、翌年同じ番組で企画された「歴代チャンピオン大会」でも、並み居る強豪チームを押さえて優勝!番組に出場していた芸能人からも「ビオラの神業が出た!」と感嘆の声が上がったそうです。
「実はこのチャンピオン大会でも、僕はディスクを上手く投げられていませんでした。そんな僕の失敗をカバーしてくれて、しかも優勝してくれるなんて…。ビオラの驚異的な勝負強さに飼い主の僕が一番驚きました」と野澤さん。
「このテレビ番組出演もそうですが、大会に出るためにいろんな地方にでかけたり新たな友達ができたり…と、犬たちのおかげで本当に貴重な出会いや経験をすることができています。犬たちは我が家の幸運の神様のような存在だと思います」。
■家族が1つのチームに
今はカラーもビオラも7歳になり、以前のようなハードスケジュールは控えていますが、週末や休日には必ずといっていいほど屋外での遊びやイベントに出かけ、犬たちと体を動かしているという野澤さん。
「7歳になりましたが、2頭ともとても元気です。若いころから、妻がシカ肉など犬の身体にいい食材で手作りフードを用意してくれたりと、健康管理に気を遣ってくれたおかげです。振り返ってみると、ここ数年は僕と妻、そして犬たちがそれぞれ役割分担して生活してきた様に思います。犬たちのおかげで、野澤家が一つのチームになれたんですよね」。
最近は、約1年半前に迎えたサルーキのビゼルと一緒にドッグショーに参加しているという野澤さん。
「ショーでは常にリードを持っているので、ドッグスポーツとは全く違う難しさと一体感があります。僕の緊張や焦りが、リードからすべてビゼルに伝わってしまうので、なるべく緊張せずに自然に楽しみながらハンドリングできるようになるのが、今の僕の課題です。ショーを通じて、ビゼルの明るさと美しさを存分に引き出してあげたいですね」。
ルアーコーシング、レトリーブ、ディスク、そしてショーの参加と、犬と一緒にさまざまな挑戦を続ける野澤さん。犬とスポーツをする魅力はどこにあるのでしょうか?
「犬と一緒に楽しい時間を共有できることに尽きます。一緒にスポーツをやったおかげで、僕は愛犬たちと本当に濃厚で豊かな時間を過ごし、深い絆を育むことができたと思います。よく『時間がなくて、大会には参加できない』とおっしゃる方もいますが、なにもちゃんとした『競技』に出る必要はありません。散歩のついでに愛犬とボール投げをしたり一緒に走ったりするのも、立派なドッグスポーツではないでしょうか。周囲の人の目を気にせず大げさに褒めてあげると、犬は大喜びして、それをバネに成長します。みなさんもぜひ、愛犬と一緒に楽しい時間をすごしてくださいね!」