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7.22016
しゃベル ✕ ワンブランド わん!ダフルストーリー Vol.19
18歳・痴ほう症の愛犬が行方不明に!高齢犬の飼い主さん必読のストーリー
■アムが消えた!いったいどこに?
茨城県土浦市で暮らす前田敏雄さん・佳子さん夫妻。2人の子どもたちはすでに独立し、今は愛猫のミレニアムと一緒に穏やかな日々を送っています。実は2年前まで前田家には、もう1人、大切な家族がいました。
愛犬のアムです。
アムは約20年前に、ある保護犬譲渡会で敏雄さんが引き取ってきた犬。まだ生まれたばかりの子犬だったアムは、すぐに前田家での生活に慣れ、すくすくと大きくなりました。
「アムは本当におとなしくて飼いやすい犬でした。後から我が家にやってきた猫のミレニアムにすら遠慮しちゃうような、優しい性格でしたね。人懐っこいので、近所の方にもすごくかわいがってもらって…」と佳子さんは懐かしみます。
アムは丈夫で病気らしい病気をしたこともありませんでしたが、16歳を過ぎたころからは老衰で体のあちこちにトラブルを抱えるようになりました。足腰が弱くなって自力ではほとんど歩けなくなり、目も白内障でほとんど見えない状態に…。そして18歳近くになると、人間でいう痴ほう症のような症状がみられるようになったのです。
「幻覚が見えていたのでしょうか、何もない空間を見て吠え続けることがよくありました。でも痴ほう症になってもアムはアム。大切な家族ですから、最期まで我が家でのんびり過ごさせてあげたいと思っていました」。
ところが、2014年7月のある土曜日、思いがけない出来事が起こります。なんと自力でほとんど歩けないはずのアムが忽然と姿を消してしまったのです!
いつもはしっかり閉まっている門が、その日に限ってなぜか少し開いていたらしく、アムはその隙間から外に出てしまったのでした。
■思いがけない場所での再会、でもアムは…
いなくなった…とはいえ、アムは歩くのもおぼつかない18歳の老犬。「そんなに遠くには行けないから、すぐに見つかるはず…」と、最初は楽観的だった前田さん夫妻ですが、いくら探してもアムはみつかりません。家の近所はもちろん、元気だったころの散歩コースもくまなく探しましたが、アムの姿はどこにもないのです。一夜明けて翌日になっても、アムは戻ってきません。「どこかに迷いこんでいるのでは?」「車に轢かれてしまったのでは…?」と不安が募ります。すると、近所に住む佳子さんの姉が「警察か市役所に訊いてみたら?」とアドバイスをくれました。
「もちろん、迷い犬が警察や保健所に保護されることは知っていました。でも、いざ自分の犬のことになると気が動転してしまって、思いつきもしませんでした」と桂子さんは苦笑い。さっそく警察に問い合わせてみたそうです。
しかし、そこにもアムの姿はありません。警察では「もしかしたら市役所に保護されているかもしれないので、問い合わせてみてください」と言われましたが、その日は運悪く日曜日。「日曜日は市役所関係は完全にお休みのはず…と思っていたので、その日は問い合わせもせずにとりあえず明日を待つことに。今思えば、この判断が悔やまれますね…」と佳子さん。
翌月曜日、市役所に行くとアムは土曜日のうちに保護されていたことが判明!なんとアムはあの不自由な体で国道を超え、家から数キロ離れた地点を徘徊しているところを通報され、市役所に収容されていたのです。しかし、この市役所でアムと前田さん夫妻が再会することはできませんでした。
なぜならアムはすでに車で1時間ほども離れた茨城県の「動物指導センター」という施設に移されていたのです!
そして、とるものもとりあえず、センターに駆けつけた夫妻の目に飛び込んできたのは…、汚物にまみれ、冷たく濡れたコンクリートの床の上にぐったりと横になるアムの姿でした。土曜日に保護された時に市役所で撮影された写真では元気そうだったのに、わずか2日半の間に急激に弱ってしまったアム。「アム!迎えに来たよ。一緒におうちに帰ろう」と呼びかけても、反応がないほど衰弱してしまっていました。
「徘徊で体力を使ってしまったのに加え、収容後は遠い見知らぬ施設で過ごさねばならなかったストレスもあって、あんなに弱ってしまったのでしょう。日曜日のうちに市役所に連絡が取れていれば…と悔やまれてなりません」と佳子さん。
■最期までアムを守ってくれた神様に感謝
それでも自宅に戻ってから、しばらくの間、アムは懸命に生き続けました。住み慣れた自宅で、大好きな家族と一緒に最後の時間を過ごしたのです。もはや食べ物もほとんど喉を通らなくなっていましたが、佳子さんがスポイトでミルクや水を口に運んでやると、ほんの少しだけ飲むこともできました。そして自宅に戻って5日目、敏雄さんと佳子さんに見守られながら、アムは眠るように息を引き取ったのでした。
「18歳という年齢を考えると、これがアムの寿命だったのか、それとも徘徊してセンターに収容されたために死期を早めてしまったのか、誰にもわかりません。ただ一つ言えるのは、センターのあの冷たい床の上でアムを一人ぼっちで死なせずにすんでよかった、自宅で看取ってやることができてよかった、ということです」と佳子さん。「そもそも、徘徊している間に車に轢かれる可能性もあったわけですし、センターに私たちが迎えにいくのがあと少し遅れていたら殺処分されていた可能性もあります。もしそうなっていたら、私たちはアムの最期を看取ることができなかったはず。最期までアムを守ってくださった神様に感謝しないといけませんね」。
アムが天国へ旅立ってから今年で丸2年。前田さん夫妻も今はアムのいない暮らしに慣れ、旅行やお孫さんのお世話などに忙しい日々を送っています。それでも何かにつけ、アムのことを思い出さない日はないという前田さん夫妻、アムの最期の日々のことを、できれば多くの人に知ってほしいと願っています。
「最近は長寿の犬が増えているそうですから、アムのように痴ほう症を患う犬も増えてくると思います。高齢犬の飼い主の皆さんは、愛犬がアムのように徘徊→行方不明にならないように、『戸締りを確実にする』『鑑札をつけたり首輪に住所や名前を書いたりして、犬の身元がわかるようにしておく』『万が一、行方不明になったら曜日に関わらず警察や市役所(保健所)に届ける』といったことを日頃から確認しておくことをお勧めしたいですね。アムの経験を活かしてもらえれば、私たちも嬉しいですし、天国のアムも喜ぶと思います。犬の老いは本当にあっという間。最期のその日まで、心残りのないように愛犬との暮らしを楽しんでくださいね」。