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5.282016
しゃベル ✕ ワンブランド わん!ダフルストーリー Vol.12
待っていてくれた「ウリ坊」。愛犬に学んだ人生の極意とは…?
■第一印象は最悪。でもいつの間にか…
都内に住む実業家の近藤正純ロバートさん一家は、2015年12月、愛犬のフレンチブルドッグ「ウリ坊」を亡くしました。13歳と10カ月で亡くなったウリ坊は、もともとロバートさんの奥様、彩夏さんが、独身時代から飼っていた犬。ウリ坊が3歳を過ぎた頃に、ロバートさんは奥様と出会って付き合い始め、当時ウリ坊と彩夏さんが住んでいたマンションに遊びに行くようになったのだそうです。
「実は僕とウリ坊、第一印象はお互いに最悪でした(笑)。ウリ坊は新参者の僕が妻と仲良くしているのが気に入らないのか、威嚇してきたり、僕と妻が並んで座っていると間に割り込んで来たり…(笑)。僕も当時はもっとモフモフした犬種が好みだったので、フレンチブルの体型とか顔に違和感があったんですよ」。
そんなウリ坊とロバートさんでしたが、一緒に暮らし始めると関係が一変。切っても切れない固い絆で結ばれるようになるまで、そう時間はかかりませんでした。
「ウリ坊は、とてもマイペースで人間にこびないタイプの犬。僕らが話をしていると大きな目でじっと僕らの目を見て聞いていたし、表情豊かで喜怒哀楽が表に出やすいし、いびきはかくし(笑)、とにかく人間臭いヤツでした。だから犬を飼っているというよりも、ウリ坊という家族と一緒に暮らしているという感覚でしたね」。
ロバートさんと奥様が喧嘩をしたときには、いつもウリ坊が仲裁役。
「言い争っていると、いつの間にか2人の間に頭をこじ入れて入ってきて、2人の目をかわるがわる見つめるんですよ。『そろそろ、やめたら?』とでも言いたげな目で。あの目をみると、僕も妻もハッと我に返って『ウリ坊も、そろそろいいんじゃないって言ってるし…、止めとこうか』ということに…。ウリ坊には何度仲直りのきっかけを作ってもらったか、わかりません(笑)」。
■犬といる時間は素の自分に戻れる時間
一緒に暮らすようになって亡くなるまでの約10年間、ロバートさん一家の思い出は常にウリ坊と共にありました。
犬も一緒に入れる温泉にウリ坊を連れていったときのこと。いざお湯を楽しもう!と我々の浴槽の横に置いた犬用のお風呂にウリ坊を入れてやったところ、全身で拒否。嫌だ!という気持ちをアピールしたかったのか、ウリ坊がロバートさんの足元にウンチをしてしまい、ロバートさんが勢い余って踏んづけてしまったこともあったそうです。
「ギエ〜!と、もう温泉どころではなくなってしまい、ゴシゴシと足だけ洗って早々に上がりました(笑)。僕たち飼い主はいろんな趣向を凝らして犬を楽しませようとするけど、犬は飼い主と一緒に過ごせさえすれば、それで十分なんだなってことを悟りましたね」。
ウリ坊と過ごす時間を通じて、数多くの気付きを得たというロバートさん。
「犬って、相手の地位や肩書に左右されない生き物なんですよ。相手が偉い人だろうが、お金持ちだろうが貧乏だろうが関係なく、いつも“素”のまま。だから犬と一緒にいると、こちらも素の自分を出せるんですよ。特に僕ら男性は、大人になってからというもの、人前で感情をあらわにすることを自制するのに慣れ切ってしまっているでしょ。でもウリ坊が相手だと、気張らなくていいから、いつも素の自分でいられるし、自分の感情を素直に表現できる。例えば家族を大事に思っている気持ちとか、愛している気持ちとかをすんなり表現できます。その意味でウリ坊は僕にとって、たとえは悪いですが精神安定剤のような存在でもありました」。
■待っていてくれたウリ坊
そんなウリ坊に大きな変化が表れたのは、奥様が第1子となる長男を出産した直後のこと。肺高血圧という病気で呼吸困難を発症、命も危ぶまれるほど重篤な状況に陥ってしまったのです。
初めての出産でただでさえ大変な状況にあった奥様は、ウリ坊が死ぬかもしれないという悲しみから大変落ち込んでしまったそう。「僕と知り合う3年も前にウリ坊を飼い始めていますから、妻とウリ坊の間には僕には計り知れない『歴史』があるんです。仕事で精神的につらかった時期をウリ坊がいたから乗り切れたというほど、ウリ坊は彼女の心の支えだったんですね。だからものすごく狼狽してしまって、見ているこちらが心配になるほどでした」。
すると、不思議なことが起こります。
瀕死の状態だったウリ坊がにわかに回復。3週間の入院を経て自宅に戻れるまでになったのです。
「たぶん、狼狽する妻の様子を見て『まだママを残しては死ねない』って思ったんでしょうね(笑)」。
自宅に戻ったウリ坊は以前と同じようにマイペースを貫き、静かに毎日を送りました。「ウリ坊は、長男の昼夜の泣き声にも全く動じず、初めての育児に大わらわの僕たちの足元にゆったりと寝そべっていました。そして時々『まぁ、落ち着いてさ』とでも言いたげに、じっと我々を見上げたりしていました。その泰然とした姿にまたも自分たちはハッとさせられたりしました」。
そして数か月後の2015年12月。長男が1歳を迎えたのを見届けて安心したのか、再びウリ坊の体調は悪化。だんだん食べ物も受け付けないようになってきました。
そんなある夜、いつものようにお休みを告げようとウリ坊の頭を撫でていた奥様でしたが、ウリ坊の目をみているうちに、なぜかその夜はウリ坊と時を過ごしたいと思ったそうなのです。そして夜遅くまで奥様とウリ坊はいろいろな思い出話をしながら、幸せな時間を過ごしました。
そして翌朝5時、奥様と入れ替わりでロバートさんが起きて来た時、ウリ坊も目を覚ましていて、いつものようにベッドの中から大きな目でロバートさんを見つめていたそうです。
「おはよう、ウリ坊。今、薬を飲ませてあげるからな」と声をかけたロバートさんが薬を取りに行き、数十秒後に戻ってくると…、もうウリ坊は天に召されていたのでした。
「前の夜、妻とゆっくりお別れをしたウリ坊は、『そういえば、あいつにまだ挨拶してないな』って思ったんでしょうね。僕が起きてくるまで、待っていてくれたんです。そして最後に僕の顔を見て『さよなら』を言って、旅立っていったんだと思います」。
■DOG saves DOG
ウリ坊の死から、2か月後、ロバートさん夫妻の間には第2子が誕生。今は2人の子どもたちと愛犬のトイプードル「Jinan坊」と一緒に、賑やかに暮らしています。
「バカバカしいと言われてしまうかもしれませんが、ウリ坊が亡くなってすぐに生まれてきた次男はウリ坊の命を受け継いでいるんじゃないかなって思うんですよ。ウリ坊は死んでしまったけれど、きっと天国で僕らのことを見守ってくれていると思います」。
これからもずっと犬と暮らし、子どもたちにも犬と暮らす素晴らしさを伝えていきたいというロバートさん。もう1つ心に決めていることがあります。
それは、ロバートさんが立ち上げた動物愛護プロジェクト「DOG saves DOG」の活動を盛り上げていくこと。
「DOG saves DOGは、ウリ坊を飼い始めたことがきっかけで殺処分の現状を知った僕が『この現状をなんとか変えなくては』と一念発起して立ち上げたプロジェクト。愛犬用アイテムの購入代金の一部が、飼い主のいない犬の保護や医療、里親探しなどの活動をしている団体に寄付される仕組みです。地道な活動ではありますが、年々、賛同してくださる方が増え、少しずつ成果が出せるようになっていますので、引き続き頑張って盛り上げていきたいですね。たくさんの幸せを与えてくれたウリ坊への恩返しの気持ちで、頑張っていこうと思っています」。
※DOG saves DOG http://dogsavesdog.co.jp/