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5.172016
しゃベル ✕ ワンブランド わん!ダフルストーリー Vol.10
愛犬イヴ、母になる!人工授精で授かった新しい家族
フレンチブルドッグ(フレブル)を知っていますか?
がっちりした体つきに短い脚、大きな頭にまん丸の大きな目。ユーモラスで愛らしいルックスに加え、優しくて人懐っこい性格で飼いやすいため、近年日本でも大人気の犬種です。
フレブルを飼う上で必ず知っておきたいのは、人工的に作られた品種であるゆえに自然分娩での出産が難しい犬種であること。産道に比べて頭が大きすぎるため自然分娩では、最悪の場合、母犬・子犬ともに命を落としてしまうこともあるのだとか…。そこで、最初から自然分娩は避け、帝王切開で出産させる飼い主さんが多いのだそうです。
■「愛犬の命は子犬の中に脈々と生き続けるのよ」
山形県に住む北川和枝さんの愛犬イヴも帝王切開で生まれたフレンチブルドッグ。イヴは、前に飼っていたフレブルの愛犬を亡くして悲しんでいる北川さんを心配した友人の紹介で、東京から山形までやってきました。
「前の犬が若くして突然亡くなってしまい寂しい毎日を過ごしていた我が家に、イヴは再び光を運んできてくれました」。
最初は「もう犬に先立たれて悲しい想いをするのは嫌だから…」と、イヴを迎えることに反対していたご主人も、いざイヴを目の前にすると、あっという間にメロメロに。ご夫妻は、イヴが1日でも長く健康でいてくれるように…と願って健康管理に気を遣い、散歩にドライブにとできる限り長い時間を一緒に過ごすようにしていたそうです。でも、ご夫妻の胸の中にはいつも「前の犬のように、イヴが突然いなくなってしまったら…?」というかすかな不安がありました。
そんなとき、定期健診で訪れた動物病院で、たまたま一緒になった飼い主さんが、北川さんにこう話しかけました。
「できれば、ワンちゃんに出産させてあげたほうがいいよ。残念だけど犬は私たちより寿命が短いでしょ。でも愛犬に子犬がいれば、もし愛犬が死んでしまっても、愛犬の命はその子犬の身体の中に脈々と生き続けることになる。そしたら、寂しくないでしょう?」
その言葉を聞いて目が覚める想いがしたという北川さん。「よし、イヴにも出産を経験させてあげよう」と決意しました。
■人工授精に挑戦、結果は…?
北川さんは、イヴが2歳になってヒート(発情期)を迎えたタイミングで東京へ。適齢期の雄フレブルとお見合いをして『人工授精』を行うためです。
「人工授精というととても驚かれるのですが、実は犬の人工授精は割とよく行われています。ヒート(発情期)のタイミングを狙って交尾をさせようとしても、上手くいく可能性は非常に低いからです。何度も交尾に挑戦させてイヴにストレスを与えるよりは、ほぼ確実に妊娠できる人工授精を選びました」という北川さんの想いが叶い、イヴは妊娠、帝王切開で無事に5頭の子犬を産むことができました。
「フレブルの自然分娩は難しいことはわかっていましたので、最初から帝王切開に決めていました。もちろん少し心配でしたが、産後の回復も早く、子犬たちも元気。無理に自然分娩を選ばなくて正解でした」。
北川さんが驚いたのは、産後のイヴの変化。甘えん坊だったイヴがすっかり「母」になって、子犬たちをしっかり守っているのです。イヴのお乳をたっぷり飲んで、5頭の犬たちはみるみる大きくなりました。
「ペットショップで見かけるフレブルの子犬は早くから親犬と離されてしまうためか、体が小さくてひょろっとしているコが多いですが、イヴの子犬たちは丸々とした子犬らしい体型。産後の一定期間、親子で一緒に過ごさせることの大切さを実感しました」。
■ビーノに受け継がれたイヴの命
離乳が済むと、5頭の子犬たちのうち4頭は、北川さんの知人の家にそれぞれもらわれていきました。残った1頭は、「ビーノ」と名付けられ、北川家でイヴとともに暮らすことに。北川さんがビーノを手元に残したのには、ある理由がありました。「フレブルは関節が弱いコが多いのですが、ビーノにも足の関節に生まれつき少しトラブルがありました。それがわかっていたので、手元において、なるべく体に負担をかけないように、ビーノを育てようと思ったのです」。
北川さんのこの判断は、結果として大正解。というのも、ビーノが加わったことで北川家の暮らしは、ますます楽しく豊かなものになったからです。
「息子に負けられない!」とばかりに貫録が出てきたイヴ、甘えん坊でやんちゃなビーノの親子はいつも一家の話題の中心。2頭のおかげで家族の会話や笑顔も増えたといいます。
「普段は母親らしく威厳たっぷりに振る舞っているイヴですが、ときには甘えてくるビーノの耳を優しく舐めてあげたりして…。そんな2頭の様子を見ていると、イヴに子供を産ませて本当によかったなと思います。そして嬉しいことに、ビーノはイヴにそっくり。あのとき動物病院で出会った方がおっしゃったように、イヴの命がビーノの中に脈々と受け継がれているんですね」。
イヴの出産と子育てから多くを学んだという北川さん。「人工授精や帝王切開など、初めての経験で不安もありましたが、今は、大好きな愛犬の命を次の世代に繋げる選択ができたことを、とても幸せに思っています」。