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3.32016
医002 : もう一度走って欲しい。犬の車いす
犬の車いすと聞くと、事故の後遺症などで歩けなくなってしまったワンちゃんのため、というイメージが強いでしょうか。実際には、病気で足が不自由になる子が圧倒的に多いといいます。ダックスフントのヘルニア、コーギーの先天性脊髄軟化症など、足を悪くしやすい犬種もあります。老化で足腰の弱るワンちゃんも少なくありません。
今回は、けっして他犬ごとではない、車いすについて――。
「この子を何とかしてあげたい」から始まった、車いすづくり
車いす制作会社のDOMSを訪れると、歓迎してくれたのはトイプードルのプーちゃん。室内に入ってからも「誰?誰?何しにきたの?」とはしゃぎ回る、活発な子です。 DOMSの前川さん夫妻が車いすを作り始めたのは、プーちゃんが椎間板ヘルニアで下半身麻痺になってしまったのがきっかけでした。歩けないだけではなく、しっぽも振れず、排泄もコントロールできない状態になり、別犬のようにふさぎ込むプーちゃんの姿に、「何とか外を歩かせてあげたい」という思いからでした。 それから、試行錯誤の車いす作りがはじまりました。仕事の後に夜遅くまで調べて、作って……、材料も作り方もひとつひとつが手探りでした。 そして、一週間。はじめての車いすにプーちゃんを乗せると、変化が……。
乗った瞬間に、プーちゃんが「あれ?!」という顔をした!
「乗ってコロコロした瞬間に『あれ!?』という顔をしたんです」 動けなかったプーちゃんは、もう一度”歩きたいように歩く”ことができるように。 さらに、車いすを使っているうちに、獣医も治らないと診断していたプーちゃんの下半身が少しずつ動くようになったのです。何よりも前川さん夫妻に嬉しかったのは、明るく遊ぶのが大好きなプーちゃんが戻ってきたことでした。 その後、プーちゃんの車いすを見た獣医さんに頼まれてもうひとつ作り、また頼まれて作り……、やがてDOMSを立ち上げ、今では年間60~70台ほどを作成するようになりました。総数は、何と333台。車いすも改良を重ねてきました。
動けなくなったから車いす、ではなくリハビリと考えて
制作は採寸から行ないます。同じようなサイズでも、細かく調節する必要があるのです。
「コーギーやシェパードは重心が後ろなので、フレームにタイヤをつける位置が違います。寝たきりで前足も弱っている子には補助輪をつけたり。ワンちゃん一匹一匹に事情があるので、それに合わせるようにしています。」
見せてもらった完成型の車いすは、本当に軽くてスポーティ。これはワンちゃんも遊びやすそう!
前川さんは「動けなくなったから車いす、ではなく、リハビリも兼ねて車いすと考えて」といいます。
「車いすは不自由になる以前と同じ姿勢を保てるので、ワンちゃん自身も違和感が少なく、散歩したり遊んだりすることが刺激になり、リハビリになっているようです。医学的根拠は無いかもしれませんが、うちの子に変化が現れたから他の子にも役に立つかも、と期待しています」
もちろん、回復効果はすべてのワンちゃんに現れるわけではありません。それでもDOMSには、「車いすが必要なくなりました!」という嬉しい報告がたびたびあるのだそうです。
「もともと、モノづくりが得意だったわけではありません。でも、ワンちゃんや飼い主さんたちの変化が嬉しくて作り続けています。今必要なくても、何かあったときに、「車いす」という選択肢があることを思い出していただければ、愛犬との生活の可能性が広がるのではないでしょうか。車いすがあることで、ワンちゃんも飼い主さんも楽しく過してもらえれば、と思います」