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3.22016
生010:劣悪な多頭飼育現場から 35 頭の犬をレスキュー!〜ボランティアの力で幸せになった犬たちの今をリポート
悪臭が立ち込める劣悪な環境の中、ピーク時には 120頭もの犬が飼われていた、静岡県小山町の多頭飼育現場。行政が何度も指導したものの思 うように解決せず、しばらく停滞状態が続いていましたが、2011年、ボランティアの女性・Gさんが現場に入ったのをきっかけに、状況が一気に好転。飼い主同意のもとで犬たちの譲渡が進み、今では 12 頭を残すのみとなっています。問題解決のカギは何だったのでしょうか? そして犬たちは今、新しい家族のもとでどのような暮らしをしているのでしょうか?Gさんと新しい飼い主の皆さんにお話を伺いました。
劣悪な状態で 120 頭の犬が…
小山町の多頭飼育現場の問題が広く知られるようになったのは、2008年。ある新聞で報道さ れたのがきっかけでした。飼い主は 70代の高齢者。もともとは 2頭の犬を飼っているごく普通の愛犬家でしたが、「犬を捨てる」「保健所に連れて行く」という知人や友人の犬を「殺処分 にされるとかわいそうだから」と引き取っているうち、自宅で飼いきれないほどの数に。そこで現在の場所に土地を借り、廃屋の中で犬を飼うことになったのだそうです。
すると繁殖で数がさらに増えた上に、心無い人がこっそり犬を捨てに来るようになり、ピーク時にはなんと 120頭まで増加。高齢の飼い主には十分な世話ができず、敷地内は汚物や残飯の悪臭が立ち込め、犬たちも非常に不健康な状態に。さらに敷地を抜け出した犬たちが周囲の畑を荒らし始めたため、近隣住民から御殿場保健所に苦情が寄せられるようになりました。
進まぬ譲渡活動。譲渡先から戻されてしまう犬も…
もちろん、行政も手をこまねいていたわけではありません。何度も職員が現場に出向いて飼い主に犬の飼い方を改善、あるいは犬を譲渡するよう何度も指導。しかし飼い主は当初「譲渡すると殺処分されてしまうから」と保健所への犬の受け渡しを拒否、こう着状態が続いていたのです。
しかし、2008年のマスコミ報道を受けて全国から寄付や引き取り希望の声が寄せられるようになると、飼い主の態度も少しずつ軟化。地元獣医師会の協力のもと、狂犬病予防やワクチン接種を実施し、健康状態の良い犬から少しずつ希望者に譲渡する活動が始まりました。当時、現場に入って診療にあたった御殿場市のユウ動物病院院長で獣医師の岸川直幹先生は「とにかく現場は不衛生で、健康状態の悪い犬が多かったですね。ほとんどの犬がフィラリアに罹っていたと思います。また、飼い主の義務である狂犬病予防はもちろん各種ワクチン接種も全くされていない状態。ノミ・マダニ被害もすごかったので、私が個人的に予防薬を寄付して処方したほどです」と当時を振り返ります。
しかし関係者の努力もむなしく、15頭ほど譲渡したところで活動は停滞してしまいました。現場で飼われていた犬は警戒心が非常に強く、そもそも譲渡できる状態の犬が少なかったこと、あるいはせっかく譲渡しても「全く慣れてくれない」と言う理由で戻されるケースが重なったことが原因だったと言います。しばらく停滞状態が続いたころ、現れたのがボランティアの女性Gさんでした。
ボランティア女性Gさんの力で状況が一気に好転
御殿場市内にすむGさんは、もともと動物愛護への関心が高く、仕事の暇を見つけては、県外の多頭飼育現場へボランティア活動に出かけていたそうです。インターネットで小山町の多頭飼育の現状を知ったGさんは、「私が以前手伝いに行った他県では、行政とボランティアが力を合わせて問題解決を図っていたのに、なぜ静岡ではできないんだろう?と歯がゆい気持ちでいっぱいでした」。
そこでGさんは事態の改善を求めて御殿場保健所を訪問、「犬の警戒心が強すぎて人に慣れないので、譲渡がすすまない」という事情説明を受けました。事情はよくわかったものの、このままでは事態は改善しないことに危機感を覚えたGさんは、自ら譲渡に取り組むことを決意。
Gさんいわく「犬たちのため、という気持ちもありましたが、あのひどい現場をあのままにしておくことは、静岡県の恥だと思う気持ちが強かった」と言います。
そして 2011年夏に自宅での一時預かりをスタート。最初に預かった犬は特に警戒心が強く、飼い主の男性も「絶対に無理だ」というほどの犬。しかしGさんは、ゆっくり時間をかけて向き合うことで次第に犬と心を通わせることに成功、数か月後にはすっかり人に慣れさせることができたのです!この犬の変貌を目の当たりにした飼い主の男性は「とても同じ犬とは思えない。奇跡だ」と感動、Gさんを信用して、犬の譲渡やボランティアの受け入れにも協力的になってきたのだそうです。」という事情説明を受けました。
事情はよくわかったものの、このままでは事態は改善しないことに危機感を覚えたGさんは、自ら譲渡に取り組むことを決意。
Gさんいわく「犬たちのため、という気持ちもありましたが、あのひどい現場をあのままにしておくことは、静岡県の恥だと思う気持ちが強かった」と言います。
そして 2011年夏に自宅での一時預かりをスタート。最初に預かった犬は特に警戒心が強く、 飼い主の男性も「絶対に無理だ」というほどの犬。しかしGさんは、ゆっくり時間をかけて向き合うことで次第に犬と心を通わせることに成功、数か月後にはすっかり人に慣れさせることができたのです!この犬の変貌を目の当たりにした飼い主の男性は「とても同じ犬とは思えない。奇跡だ」と感動、Gさんを信用して、犬の譲渡やボランティアの受け入れにも協力的になってきたのだそうです。
血のにじむような努力の結果、2年間で35頭を譲渡
ここからGさんの壮絶な戦いが始まりました。常時 4 ~ 5 頭はいる犬たちの世話の傍ら、新しい飼い主さん募集のためのブログを 1 日数回は更新、FacebookなどSNSでの情報発信、譲渡会の開催とその準備…。仕事以外の時間は全て犬のために費やしたそうです。さらに犬たちの医療費(ワクチン接種、不妊去勢手術代含む)も、ほぼ全てGさんの個人負担。何年もかかって貯めた貯金を取り崩して、犬たちのために使ったとGさんは話します。
こういった苦労の結果、Gさんのもとから新しい家族に譲渡されていった犬は、約2年間で計35頭にものぼります。寒い冬に屋外のケージに放置されたために凍傷で左後ろ脚を失った「クッキー」も、人見知りが激しく臆病だった「ホアンホアン」も、真っ黒に汚れてやせ細っていた「エルフ」も、今はみんな、新しい飼い主のもとで穏やかに暮らしています。
「ホアンホアン」の飼い主・後藤さんは「保護犬を飼うのは初めてで不安もありましたが、Gさんの譲渡会の様子を見て、ここの犬なら大丈夫だろうと確信しました。実際に飼ってみるとホアンホアンは拍子抜けするほどよい犬で、今は老人施設にセラピー犬としてボランティアに行っているほどなんですよ」。また「クッキー」の飼い主・荒井さんからは「元気な子犬を飼うのは体力的に無理。
でもクッキーぐらいの年の犬なら、楽に飼えますよ」との声も。Gさんは、「素晴らしい飼い主さんと犬を通じて出会い、人と人の絆ができたことが私にとって最大の喜びです」と話していました。
「人」に依存せずに問題解決できる仕組みを!
Gさんの努力の甲斐あって、2013年8月末現在、小山町の多頭飼育現場に残っている犬は12頭。いずれも特に警戒心が強く人に慣れていないために、これまで譲渡されることのなかった犬たちばかりです。Gさんはこの12頭についても自宅で預かり、人に慣れさせた上で譲渡先を探すことにしていて、「遅くとも2013年末には、この小山町多頭飼育現場を完全閉鎖するのが現在の目標」としています。
2年間の活動で大きな成果を残したGさんですが、今後は自分主体のボランティア活動はせず 「ごく普通の愛犬家として犬と接する生活に戻りたい。動物愛護活動にも。ひとりの愛犬家として関わる程度にとどめたい」と話していました。
また、一連の活動を見守ってきたユウ動物病院の岸川先生は「今回の問題を解決に近づけたのは、Gさんの力によるところが大きい。もしGさんが協力しなかったら、あのまま状況が変わらず、更なる悲劇を招いていたかもしれない」と指摘。「今回のように特定の個人が負担を負うのではなく、行政主導で解決する方法も模索できたはず。自治体が間違った飼い方をしている飼い主に毅然と対応できるような法的整備を進め、ノウハウを自治体間で共有するとよいのでは…」と問題提起しました。
どこの自治体でも起こりうる多頭飼育問題。確かに万が一、問題が起きた時のための対策を各地域で情報共有するしくみができれば、心強いですよね。多頭飼育の多くは「犬が好き」「犬を守りたい」という気持ちから始まったもの。犬への愛情が悲劇的な結末に終わってしまうことのないよう、私たちONE BRANDも、適切な犬の飼い方についての啓発活動など、飼い主のモラル向上のための取り組みを続けていきます。