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昨年4月から立ち入りが制限された福島第一原子力発電所半径 20km圏内では、今も多くの動物たちが取り残されている。エサ不足や病気などで多くの動物たちが命を落とす中、行政や獣医師らによって11月までに約550頭の犬が圏外に救助されたという。その犬たちは今、どうしているのか? 取材班は11月中旬、ONE LOVEプロジェクト賛同者で歌手のIMALUさんと一緒に、福島県内のシェルターを訪ねた。
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私たちが訪ねた「どうぶつ救援本部福島シェルター」は、福島第一原子力発電所から約50km離れた山間部・三春町にある。同シェルターは(財)日本動物愛護協会など4団体が昨年7月に運営を開始、訪問時には犬40頭、猫35頭が保護されていた。ほとんどが警戒区域から救助されてここにやってきた動物たちだ。常駐スタッフは獣医師、動物看護師、ドッグトレーナーの計3名。ボランティアの力を借りながら、動物たちの世話や飼い主探しに取り組んでいる。開設当初から常駐して救護活動にあたる動物看護師の谷茂岡(やもおか)良佳さんは「保護直後は痩せて皮膚病を患っている子も多かったが、今はみな健康を取り戻している」と話す。私たちが訪れたのはちょうど午後のお散歩タイム。谷茂岡さんらの指導の下、IMALUさんも散歩の手伝いをさせてもらうことになった。
      スタッフと記念撮影するIMALUさん
3本脚の「うっちー」
 
IMALUさんが最初に散歩を担当したのは仮名「うっちー」(飼い主が見つかっていないため本名不明)。以前事故に遭ったのだろうか、うっちーには右前脚がない。うっちーが警戒区域から救助されたのは昨年10月。つまりこの不自由な体で約7ヶ月間も、自力で生き抜いてきたということだ。今は健康を取り戻し、初対面のIMALUさんにも人懐っこく体を擦りつけるうっちー。初めての被災地訪問で緊張気味だったIMALUさんの表情が、途端に柔らかくなった。「東京でも『40頭がシェルターで保護されている』という『情報』は手に入ります。でもその40頭がどんな風に毎日を生きているのかは、ここに来なければわからなかった。ここに来て初めて被災犬の現状を理解できた気がします」と語る。
 散歩の後、清掃作業などにも積極的に取り組んだIMALUさん。「被災犬のために何かしたいと思っていても、何をすればいいか分からないという人は多いはず。私もそうでした。でもあれこれ考えるより、たとえ小さなことでもとりあえず何か行動を起こすことが大事なんだなって、今日わかりました」。今回の経験を通じて、今後の支援活動の方向性が見えてきたようだ。帰り際、犬たちに「また来るよ!」と呼びかけていた。
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1頭ずつのお散歩、ケージの清掃、診療時の保定などを手伝ったIMALUさん
人に慣れない「デンスケ」
photo04  もちろん、全ての被災犬がうっちーのように人懐っこいわけではない。例えば元猟犬のデンスケ。初対面の私たちを警戒し、ずっと吠え続けていた。デンスケは被災後、元飼い主が高齢者施設に入居したため飼えなくなり、このシェルターに保護された犬。人里離れた山奥で飼い主と二人きりで生活していたためか、他人への警戒心が強く、シェルターに常駐する獣医師の馬場國敏先生にしか心を許さない。馬場先生は毎日、自分の食事をデンスケに分け与えることで、コミュニケーションを図り、数カ月がかりでやっとここまで打ち解けることができたのだという。散歩に連れ出せるのも先生だけだ。先生は「デンスケに新しい飼い主を見つけることは難しい」と判断、シェルター閉鎖後は自宅で自分の犬として飼うことに決めているそうだ。 photo04
   デンスケと昼食を食べる馬場先生   個別の様子を毎日、記している健康チェック票
「飼い主との普通の暮らし」に勝る幸せはない
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 取材時、シェルターにいた犬40頭のうち、元の飼い主が見つかっていたのはわずか6頭。シェルターではインターネットの検索サイト(※)などで元の飼い主を捜すのと同時に、昨年12月からは新たな飼い主の募集も始めた。
シェルターが閉鎖する1月末までには全ての犬・猫の飼い主を見つけてやりたいと谷茂岡さんは話す。「よく、『シェルターに保護されて幸せだね』っておっしゃる方がいるのですが、それは違います。動物たちにとってシェルターはゴールではなく、あくまでも一時的な居場所にすぎません。集団生活のストレスなどを考えると、シェルターでの生活は半年が限界でしょう。犬にとっては『飼い主との普通の暮らし』に勝る幸せはないんです。家族のもとに帰れて初めて、あるいは新しい家族と巡りあえて初めて、この子たちの被災生活が終わったと言えるのではないでしょうか」。
※MSNペットサーチ http://eastjapaneq.jp.msn.com/petsearch
川内村で母子でいた母犬マユ。隣のケージにこどものデン。
3.11の悲しみを繰り返さないために
 震災直後から被災動物の救援に奔走してきた谷茂岡さん。強く印象に残っている場面があるそうだ。それは、このシェルターで愛犬に再会したある飼い主が、「置き去りにしてごめんね」と泣きながら謝っていた姿。愛犬を置き去りにした罪悪感にさいなまれていた飼い主のつらさが、痛いほど伝わってきたという。「たまに『犬を置き去りにするなんてけしからん』みたいな声を聞きますが、ほとんどの人は好きでそうしたんじゃないんです。どうしても連れていけなくて、泣く泣く置いてきたんですよね」。そんな悲しみを2度と繰り返さないために、今、私たちができることは何だろうか?谷茂岡さんは次のように答えてくれた。「ハードとソフト、両面での備えが必要だと思います。ハードでは災害時に動物を連れて避難できる法的な根拠を整備すること。ペットの同行避難が当たり前、という社会を実現するために、これから私たち国民が行政に働きかけるべきだと思います。ソフトは、飼い主側の課題です。例えば避難所や仮設住宅で人に迷惑をかけないように愛犬をしつけておくこと。万が一はぐれても、すぐに見つけられるように、鑑札を付けておくことも大切です。今回の教訓を私たちがちゃんと次に生かさないと、犠牲になったたくさんの命が浮かばれませんよね」。福島の冬は寒く、長い。春、三春町の名物「三春滝桜」が咲く頃には一頭でも多くの被災犬が家族のもとで暮らせるよう、ONE BRANDも情報発信を続けていきたい。
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猫舎にて「なでられたり抱かれたりに飢えている」と谷茂岡さん。

※どうぶつ救援本部はほとんどの動物たちが元の飼い主や新しい飼い主に引き取られ1/25に閉鎖となりました。
一部飼い主が見つかっていない犬猫たちについては引き続き新しい飼い主探しを続けていくそうです。
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